【没後100年】グスタフ・クリムトは琳派だから日本人の琴線に触れる


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Wikipediaより

 

グスタフ・クリムトを知っていますか?

 

19世紀末にウィーンで活躍した絵描きです。

 

私が最も好きな絵描きです。

好きすぎて私の新婚旅行はクリムトおじさんのお墓参りでウィーンに行ってきたほどです。

クリムトおじさんは1918年2月6日に亡くなっていて、今年2018年はクリムトの没後100年に当ります。

もうすぐ命日なので、大好きなクリムトおじさんについて書いていこうと思います。

 

 

グスタフ・クリムトとは

グスタフ・クリムト(1862年7月14日ー1918年2月6日)

グスタフ・クリムト - Wikipedia

 

グスタフ・クリムトドイツ語Gustav Klimt1862年7月14日 - 1918年2月6日)は、世紀末ウィーンを代表する帝政オーストリア画家 

Wikipediaより

 

 

クリムトの名前を知らなくても絵を見たことのある人は多いのではないでしょうか。

数年前「アデーレ・ブロッホバウアーの肖像Ⅰ」というクリムトおじさんの作品が当時最高額の156億円という価格でエスティ・ローダーの社長に売却されたニュースが話題になったからです。

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グスタフ・クリムト作「アデーレ・ブロッホバウアーの肖像Ⅰ」("Portrait of Adele Bloch-Bauer I" Oil ,Silver , Gold on Canvas 1907 Gustav Klimt)

出典:Wikipedia

 

あと有名な作品では「接吻」があります。

The Kiss - Gustav Klimt - Google Cultural Institute.jpg

グスタフ・クリムト「接吻」("Der Kuss" Oil on Canvas 1907-1908 Gustav Klimt)

出典:Wikipedia

 

どうですか?

見たことありますか?

 

クリムトと琳派

クリムトおじさんは金を好んでよく使います。

というのもクリムトおじさんはお父さんが彫金師で金を扱うのが自然な環境で育ったからです。

 

さらに日本の「琳派」の影響も色濃く受けています。

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俵屋宗達「風神雷神図屏風」 出典:Wikipedia

 

これは日本人なら誰でも知っているでしょう。スカジャンの柄にもよく使われています。

こういった金使いの特徴をクリムトおじさんはよく捉えています。

もちろん模倣ではないですが、影響を受け、クリムトおじさんというフィルターを通して数々の琳派を感じさせる作品を残しています。

 

と、クリムトおじさんを見ていく場合、つい金使いの見事さに目が行ってしまいがちですが、私はクリムトおじさんの別の点にも琳派、あるいは日本的美的感覚の共通点を見出しています。

 

それは、余白です。

 

クリムトおじさんは余白の使い方が半端ないです。

 

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ウィーン分離派第1回展覧会ポスター 

出典:https://www.fineartprintsondemand.com/artists/klimt/secession_poster.htm

 

これはクリムトおじさんを中心に結成された「ウィーン分離派」という芸術家のグループによって開催された展覧会の第1回目のポスターです。

 

もちろん描いたのはクリムトおじさんです。

 

ここでちょっと想像してみてください。

 

あなたの好きな映画のポスターを思い浮かべてください。

中心には何がありますか?

 

 

超有名な映画スターウォーズのポスターと見比べてみましょう。

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スターウォーズ「フォースの覚醒」映画ポスター 

出典:Star Wars: The Force Awakens | Imperial Cinema

 

 

偏見だらけで見てください。

ふつう宣伝のためのポスターなら中心のいちばん見てもらいやすいところにメインビジュアル持ってきますよね?

 

ところがどっこい。

クリムトおじさんはこのように真ん中を余白にしちゃうのです。

これってすごいです。

ふつうこれやっちゃうと

「おいおい、手抜きかよ」

と突っ込まれてまずアウトです。通りません。

それが通っちゃう。というか、

「おお!真ん中真っ白とか超かっこいい!」

となるのがクリムトおじさんのすごさです。センスです。かっこいい!

 

こういう感じって、特に西洋絵画だとあまりみることがありません。

どちらかといえば油絵というのは「足し算」の技法だからです。

うまく描けなくてもその上にどんどんごてごてと絵具を塗っていけば、下に描いた絵は塗りつぶされていく。つまりどんどん足して描くのが油彩の使い方だからです。

その文化の中に暮らしている人間においてこの余白使いは驚異のセンスと言わざるを得ないです。

 

すげえぞ!クリムトおじさん!

 

振り返って俵屋宗達の「風神雷神図」を見てください。

これもメインビジュアルの「風神、雷神」ははじっこに描いてあります。

あと金貼っただけ。貼っただけ、っていうのも酷い言い方ですが。

 

こういった点において、私はこう感じざるを得ないです。

 

グスタフ・クリムトは琳派である。

 

 

【琳派】とは

そんなら琳派ってなんなのさ?ってことになるでしょう。

 

琳派 - Wikipedia

 

正確なところはWikipediaに任せるとして、ここでは私の琳派解釈で説明します。

大して当てになんねえな、とか言うな!これでも10年以上絵描いて食ってたんだぞ。

 

琳派は俵屋宗達とか本阿弥光悦によって始まった芸術活動を、尾形光琳が傾倒し模倣したことによって系統づけられた芸術表現の一派です。

わかりづらいですね。

つまり俵屋宗達の風神雷神図を尾形光琳が見て「おおっ!これちょーかっこいい!おれもマネしよっと」ということで描いてみた、みたいなことです。

俵屋宗達と尾形光琳は全く同じ絵を描いています。

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こっちが宗達。出典:Wikipedia

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こっちが光琳。出典:Wikipedia

 

ね!違う絵だけど同じ絵でしょ!

 

音楽の世界だとよく「カバー」とか「カヴァー」とか「トリビュート」なんつって他人の持ち歌恥ずかしげもなくパクって徳永英明がカバー曲で小銭稼ぐなんてのは当たり前ですが、絵の世界では珍しいです。

 

尾形光琳はこれまたすごい芸術家でいろいろ描いてます。別にパクらなくても小銭稼がなくても全然よかったんです。

 

で、さらにこれをマネした人が現れます。

酒井抱一さんです。

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酒井さんの風神雷神。出典:酒井抱一 風神雷神図屏風 | 令始ブログ 【龍・和風デザイン・イラスト・画家】

 

この人たちには一切師弟関係がありません。時代もバラバラです。

ただ単にリスペクトして追求した結果、同じ方向を見て、同じ芸術を追及している同志と時代を超えて出会った、ということの結果です。すいませんおれの解釈ですが。

 

なので世の中には様々な派閥や流派があり、伝統があり、北斗神拳のように一子相伝でしか継承できないものもたくさんありますが、琳派に関しては全くそうではなく、「こういうふうな芸術活動をしていた人たち」を後世の人間が後付けで「琳派」と呼ぶようになった、というだけなのです。

 

だから私は言いたい。

 

グスタフ・クリムトは琳派である。

 

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ちなみにこれは私が描いた「風神雷神図」。

すいません、なんか。

 

梅田ツタヤで琳派オマージュ展を開催した時にメインビジュアルで使っていただきました。

展覧会ではセットで30万で販売していましたが、案の定誰も買ってくれなかったので5000円で知り合いに売ってしまいました。

 

聡明なあなたならここでお分かりかと思いますが、そうです、私は琳派になろうと思っていたのです。

目論見は見事に外れ、現在絶賛ブラック企業社畜中です。

 

まあ、それはいいですが。

 

おすすめのクリムト作品

最後に私が好きなクリムト作品を紹介します。

まずはこれ。

 

「ダナエ」

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グスタフ・クリムト「ダナエ」 出典:Wikipedia

 

これはギリシャ神話の一説で、ものすごい美しいダナエという娘を神ゼウスが見初めて、「どうしてもヤリたい」と思い悩んだ結果、絶対にゼウスにヤラせないぞと意気込んで娘ダナエを閉じ込めておいた親の隙をついて、なんと黄金の雨になってダナエとヤッた、というエピソードを描いてます。

ダナエのあそこに注いでるのがゼウスである黄金の雨です。

ゼウスってのはほんとろくでもない神様です。

ほぼ女とヤることしか考えてない。そしてそのためならだいたい何でもやります。

 

もしあなたが「ダナエの絵描いてよ」って言われたとして、こういうふうに描きますか?いいえ描きません(反語)。

少なくとも私はムリです。すごい構図です。しかも適度にエロい。

 

クリムトおじさんはよく正方形のキャンバスに描きます。

これもいいんです。

 

 

 

はい次。

 

「ヌーダ・ヴェリタス(裸の真実)」

グスタフ・クリムト「ヌーダヴェリタス」 出典:Wikipedia

 

今度は長いです。

私はこれをウィーンで見ました。

写真美術館とかいうよくわからんところに急にどーんとかけてあります。

ものすげー近くで見られるのでものすげー感動します。

 

 

「ザ・パーク」

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グスタフ・クリムト「ザ・パーク」 出典:https://www.gustav-klimt.com/The-Park.jsp

 

「ザ・パーク」とかいうとなんかスタンドみたいですが、

私がはじめて見たクリムトおじさんの作品はこれです。

ニューヨーク留学中にMoMAで見ました。

はっきりいってただ点々ではっぱが描いてあるだけのように見えますが、実際これ描いてみ。こういうふうに遠近感つけるのムリだから。

そしてこれもまた余白。

一見緑で埋め尽くされていますが、およそ画面の8割方緑の点々です。これはある意味「余白」です。

正方形のキャンバス。画面の8割緑の点々。からの「ザ・パーク」。マジでスタンドくらい出てきそうです。何言ってんだかわかりますか?わからないですね。そうですか。

 

あと、「哲学」「医学」「法学」という鉄板なある意味中二病的ファンタジー3部作もありますが、これは第2次世界大戦時に焼けてしまいました。残念。

これもすげえよ。

 

 

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「医学」 出典:Wikipedia

 

 

f:id:toritamegoro:20180203152105p:plain「哲学」  出典:Wikipedia

 

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「法学」  出典:Wikipedia

 

 

クリムトおじさんの作品はすごいいいので、

これをきっかけに少しでもおじさんの作品が見てもらえたらいいなという思いを込めて。

 

 

おしまい

 

Amazon Kindle版の画集もあるようなんで、興味ある方はすぐ見られます。 


Klimt


Gustav Klimt: 50+ Symbolist Paintings (English Edition)

 

 

ヘンリーダーガーも好きです。

gyakutenn.hatenablog.com

 

絵描きでした。

gyakutenn.hatenablog.com

 

絵本とか。

gyakutenn.hatenablog.com

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